ヤマダ電機といえば、その急成長は目を見張るものがあり、それがゆえに、

ヤマダ商法と言われる強引な商売のやり方に批判的な人も多くいることは

否定できません。

ただ、商売というのは強引なやり方だけではうまくいかないのも事実です。

やはり業界のトップ企業というのは、どの業界においても簡単になれるものでは

ありませんし、かなりの努力、勉強をしているのは間違いありません。

そこで、ヤマダ電機の研究をして、私たち中小企業が真似をできることはないか

という観点から書いています。

ヤマダ電機というだけで毛嫌いすることなく、冷静に研究をして良いところは

貪欲に吸収したいと思います。

1.ヤマダ電機の戦略1(2009年2月16日のブログ記事から)

2009年2月15日の日本経済新聞「そこが知りたい」でヤマダ電機山田昇会長の

インタビュー記事が載っています。

今まで家電量販店の躍進を支えていた薄型テレビ、携帯電話、デジタルカメラ、

パソコンの売上が停滞しています。

記事によりますと、「成長が続いてきた家電量販店に異変が起きている。

けん引役のデジタル家電需要が伸び悩み、価格下落に歯止めがかからない。

各社の業績は急速に悪化し、最大手のヤマダ電機も二〇〇九年三月期の

連結純利益が六期ぶりの減少となる見通し。」

薄型テレビは、去年北京オリンピックがあったにも関わらず、思ったように

需要が伸びませんでした。

そのため、家電各社の在庫が急増し、年末にはアメリカ、日本において価格が

急落し、家電量販店も価格競争を強いられていますので、利益率が落ちている

と思われます。

携帯電話は総務省の指導による販売方法の変更により、今までのように

新規契約時にただ同然で販売することが減りました。

その結果、新機種に変更する機種変更に今までより費用がかかることもあり、

買い替え需要が盛り上がりませんでした。

そして、デジタルカメラですが、今までは画素数の増加により、画質のよさを

アピールして新機種を売って来ましたが、700万画素を越えたころから、

画質的には十分なものであり、差別化が難しくなっています。

今までかなりの台数を販売してきたこと、携帯電話のカメラの画素数の増加

による高機能化などにより需要が頭打ちになっています。

それから、パソコンですが、台湾メーカーが主導した携帯に便利な低価格小型

ミニパソコンが人気になっており、既存のノートパソコンの販売に影響が出ています。

このように、今までの売れ筋商品の売上が停滞しています。

売上停滞の原因と今の不況を考えますと、次の大型商品が出てくるまで、

販売価格の低下もあり家電量販店が売上を伸ばすのは難しいと思われます。

時代のニーズにマッチした省エネ家電なども、節約できる電気代を考えますと

お勧めですが、まだ力不足です。

2.消費不況・ヤマダ電機の戦略2(2009年2月17日のブログ記事から)

ヤマダ電機は今までの郊外店の出店から、積極的に東京都内などに

出店してきました。

郊外にほぼ店を出し切り、成長するためには、ライバルがひしめく都市に

出店する必要があったのです。

いま、その積極的な出店のために減価償却費の増大が問題とされていますが、

苦しいのはヤマダ電機だけでなく、ほかの家電量販店の方がヤマダ電機より

苦しいのが現実です。

そして、その出店戦略は勝つための戦略であり、地域一番店を目指しています。


ですから、出店したところはライバルと同等以上の大型店を出しているのです。

当然に勝つか負けるかの勝負をするわけですから、中途半端な店では勝負に

なりません。(戦力が同じ以上でないと勝負にならない)

品揃えで負けないように、必然的に大型店になるのです。

私の事務所のある東京豊島区池袋にヤマダ電機は出店していますが、

三越池袋店が閉店したあとに、さらにお店を出すようです。

池袋といえばビックカメラの牙城であり、本店がある場所です。

さらなる成長をするために新規出店を増やしたので、減価償却費が増えるのは

覚悟の上だと思います。

そして、その戦略はヤマダ電機以上にライバルの業績を直撃しているようです。

価格競争が激化しているからです。

ナショナルブランドの同じ商品を売っている訳ですから、当然です。

山田会長は価格もサービスの一部だと言い、値段の安さを強調していますが、

値段だけでない戦略も考えているのです。


3.消費不況・ヤマダ電機の戦略3(2009年2月18日のブログ記事から)

ヤマダ電機山田会長が考えている戦略とは。

私は次のように考えています。

家電量販店の成長を支えていた商品、薄型テレビ、携帯電話、デジタルカメラ、

パソコンなどが大幅な価格下落に見舞われています。

おそらく、今の不況の深刻さ(急激な販売減による在庫急増)を考えますと、

次の大型商品が育つまでこの状態が続くのではないでしょうか。

そうすると、数量ベースでは前年を超えても、金額ベースでは前年割れも

覚悟している。

そして、このままでは利益率も下がると考えているのではないでしょうか。

日本経済新聞「そこが知りたい」では、その対策として『コスト競争力の強化』を

あげています。

損益計算書(抜粋)を考えていただけると分かりますが、

Ⅰ.売上高

Ⅱ.売上原価

売上総利益

Ⅲ.販売費及び管理費(販管費)

営業利益

Ⅳ.営業外損益

経常利益

となっています。

今までは、売上高を増やし利益を増やしてきました。

これからは、売上高が増えませんから、売上原価を減らすか販管費を

減らさなければ利益は確保できないのです。

売上原価(仕入原価)を減らすために、取引メーカーの選別に転換するそうです。

ここで思い浮かぶのが、日産自動車のゴーンショックです。

販売力があるわけですから、例えばテレビの特定機種にしぼり発注をかければ、

大量仕入でかなり安くなります。

そして、在庫管理や物流の効率化を考えています。

これからは、在庫管理がかなり重要になります。

景気低迷によりデフレになっていますから、できるだけ在庫を持たないように

しなければなりません。

商品の回転が悪く在庫を抱えますと、その間に売値が下がる恐れがあるからです。

それから、目立たないのですが物流の効率化も重要です。

ヤマダ電機は前から物流の効率化に力を入れ、物流センターを全国に設けて

全国展開した店舗に効率よく配送しています。

在庫管理と物流に力を入れている会社は多く、ニトリなども店舗の全国展開に

あわせて、最新鋭の倉庫を全国に建設しています。

ここまでは普通に考えることですが、山田会長はこの先も考えています。

税理士森大志の時代の流れを読む『大店法の改正・ヤマダ電機の場合』参照


4.消費不況・ヤマダ電機の戦略4(2009年2月19日の記事から)

ヤマダ電機の山田会長は、日本経済新聞「そこが知りたい」では、不況対策として

『コスト競争力の強化』をあげています。

その中で、全国でチェーン展開しているので自社の店舗間で競合が起こり生産性

が落ちると述べています。

既存店を閉めて大きい店に建て直したり、家電以外の品揃えも増やしたりして

いるそうです。

大きいお店に建て替えるスクラップアンドビルドはよくあることですが、

家電以外の品揃えを増やしていることに、戦略性を感じています。

家電量販店は販売促進の手段として、ポイントカードを発行して、商品購入時に

ポイントを付けています。

私もポイントが付きますので、得した気分になり一生懸命ポイントを貯めています。

そして、ポイントを活かすためにまた買い物に行きます。

このように、家電量販店では大きなポイントが付くこともあり、有力な販促手段

として大きな貢献をしているのは間違いありません。

しかし、最近ではこのポイントも大きな負担になっているのです。

ヤマダ電機の平成21年3月期第三四半期の決算によりますと、平成20年12月

31日現在のポイント引当金は153億52百万円です。

さすがに、売上が1兆円を超える家電量販店ですから、100億円を超える大きな

金額となっています。

ここで、家電以外の品揃えも増やしたりしているということに意味があるのです。

最近、ヤマダ電機では「エレンタ」という業態を店舗内に併設しています。

扱い商品は、ブランド食器、調理器具、キッチン用品全般などです。

そして、ヤマダ電機のポイントをそのまま使用できます。

そうしますと、家電以外の商品も買い物できることが、他の家電量販店との

差別化になるだけでなく、利益にも大きく貢献する可能性があるのです。

一般に、家電量販店は薄利多売の商売をしているので、総合スーパーより

利益率が低いと言われています。

ポイントを共通で使えるようにして、そのポイントで家電量販店だけでなく、

利益率の高い商品を購入していただければ、利益がでるのです。

たとえば、ポイント5万円分で電気製品を交換する場合とブランド食器を交換する

場合を考えてください。

電気製品の原価が3万5千円で、ブランド食器の原価が3万円であれば、

差額5千円が利益になります。

ポイント引当金の残高は153億52百万円ですから、1%の違いでも

1億5千万円以上の利益になります。

税理士森大志のひとりごと「ローソンストア100・たかが1円されど1円」参照)

扱い商品を増やし、他の家電量販店との差別化をはかり、利益も増やす、

まさに一石二鳥の戦略だと思います。

また、他社とポイントの相互利用を行っているのも同様の理由だと思われます。

ヤマダ会長は、まだまだ考えています。


5.消費不況・ヤマダ電機の戦略5(2009年2月20日のブログ記事から)

ヤマダ電機の研究をしますと、本当によく考えられてビジネスモデルを

構築していることがわかります。

ですから、その結果として売上高ナンバーワンになったといえます。

私たちが家電量販店を選ぶ理由で一番多いのが、ダントツで価格が安いということです。

その次に、品揃えが豊富、ポイントなどのお得なサービスがあると続きます。

そして、店頭で家電を選ぶポイントで一番多いのも、価格であり、販売員の説明、

基本性能が続きます。

中小企業が大企業に対抗して生き残るには、価格では対抗できないのできめの

細かいサービスを行う、という考え方があります。

街の電器屋さんも同様に、大手量販店のできないきめの細かいサービスで

生き残りをかけています。

価格もサービスという考えもありますが、操作方法のわからない年配のお客様に

丁寧に操作方法を教える、細かい注文でも対応する等々です。

大手量販店が同様のサービスをしようと思ってもコストの面で採算がとれません。

ですから、大手量販店のお客様と街の電器屋さんとは、客層が違いますので

バッティングしません。

そんなところにも、ヤマダ電機は食い込んでいます。

それは、街の電器屋さん相手のフランチャイズを展開しているのです。

(2009年2月1日現在803店)

ヤマダ電機の100%子会社にコスモスベリーズという会社があります。

会社のホームページによりますと、事業目的は次の通りです。

①家電小売業を営む加盟会社メンバー店へのリティルサポートシステム

(協業事業)の提供

②加盟会社メンバー店への商品及び販売促進の供給

③加盟会社メンバー店へのソフトビジネスコンテンツビジネスの供給

④加盟会社メンバー店への経営指導及び情報システムの提供

⑤家電専門店メンバーの加盟開発

自分のお客様とバッティングしない客層を相手とする街の電器店相手に

卸売をしているのです。

ここまで考えているのかと、本当に感心してしまいます。

私たちも同様に今までのビジネスモデルを見直し、原点に返って考えましょう。

以上は、私が過去に書いたブログ記事を基に書いていますから、内容は古いですが

考え方の参考になれば幸いです。

この記事ではヤマダ電機が苦戦していることを書いていますが、その後は

エコポイントの影響で薄型テレビが売れてヤマダ電機の2010年3月期の連結

決算では、売上高が2兆円を超えました。 (需要の先食いで、後が怖いという見方あり)

また、三越池袋店の跡地に出店した「LABI1日本総本店池袋」は、売上目標を達成

したとのことです。 

 

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名前 森 大志(もりたいし)
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東京都豊島区池袋で開業している税理士です。今月の税務・税制改正等は上記サイトをご覧下さい。

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〒170-0013
東京都豊島区東池袋5-50-6 栄第一ビル6階

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